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Собака и Кошка


パストサラミと目玉焼き2
by pastsarami
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允ちゃん祭り その17

最後だよ。

『あゝ陸軍 隼戦闘隊』
監督:村山三男
脚本:須崎勝弥
撮影:渡辺公夫

戦争映画は何本か見てきてるけど、空が舞台になってるものは意識的に避けてきた。
お国の為・だいじなひとたちを守る為のほかに、おとこのひとの空とか飛行機へのロマン
みたいなものものっかって、さらにきれいなものに仕上がっていそうな印象があるから。

特にこれは実際にいたひとを描いているし。

そのきれいさってのは恐い。
じぶんは戦争を体験してない。戦争がダメだとかもう起こしちゃいけないとかは
自分のなかから生まれたものじゃない。
生まれたときにはもうすでに存在している考えで、いいとかわるいを感じる前にそれは存在してた。
謂わばすりこみで、後戻りすることなんか絶対に許されないすりこみ。
そのすりこみがなければ、人間は簡単に戦争を引き起こすくだらない生き物で
じぶんのなかのそういう汚いぶぶんが恐くてたまらないから。

でもミニチュア感すごくてリアリティに問題があるという噂を聞きつけ、
今回はちょっと見に行って来たよ。



不思議な映画だった。なんだかシュールだった。

おそらくは、真面目に撮られている映画なんだと考えられる。
加藤さんは実際にいたひとだし、それでおちゃらけた映画とか撮ったら多分侮辱罪レベルだとおもう。

なのになんだか、「え…真面目に撮ってる?」って何度も苦笑する。
何等かの反抗心でもあったのだろうか。

まず、画の撮り方が。
戦争映画ってのは、死にたくないっていう生物としての基本的な心情の上に、守るべき何かの為に
無理やりなかたちにおりまげたいろいろな感情がのっかってて、それはまっすぐで濃密なもので
そこをいちばん見せてくるから、大体役者さんの表情だったり声だったり空気だったりをぐっと見せる
撮り方するんだけど、なんかこの作品は遠くて。

小窓を作って、その中だけに人物を置いて、他は壁とか木とかが映ってる。
こういう撮り方は個人的には大好きなんだけど、戦争映画でこういうアートチックな撮り方をされると
意識が役者さんや台詞に集中できなくて、なんとも面食らう。

あと、特にシュールな印象だったのが最後。
加藤さんが亡くなるその日のシーン。
なんか40代になった表現だとおもうんだけど、いきなり髭面の允ちゃん。
もう戦闘機には乗らないでくださいと部下たちにせがまれる允ちゃん。
そして允ちゃんがみんなの歌聴きたいなぁとちょっと大きめにせがむと、
いきなり允ちゃんの周りに円陣を組んで歌い出す部下たち。
これだけでも十分シュールなんだけど、それに感極まった允ちゃんは
みんなにカメラを向け異常にシャッターを切る。
コワイ、本当にコワイ。怖過ぎる。何この集団。
いや、このシチュエーションがシュールなんじゃなくて、この画がシュールなの。
なんか長いし…。

そのあと、わー敵がきたぞーってみんなで追撃しに行って、結局允ちゃんが亡くなるシーンなんだけど
もうさばかの頭では切り替え不可能。

他にもあの、冒頭のぼきゃーぼきゃーって瓦壊す連続シーンとかもシュールだった。
平泉征さんの犬との烈しい触れ合い(ムツゴロウさんレベル)や忠犬ハチ公的シーンとかも。
結局一番グッときて目頭を押さえたのは、この忠犬シーンだった…。

だからこの映画の見所は、なんといってもこのシュールさ加減だとおもったよ。

あと、宇津井健さんね。
宇津井さんが男らしいのはよく分かってるよ。
優しい穏やかなルックスと雰囲気の割に、核が驚くほど男らしいひとだ。
このひとが翼や派を持ってたって、さばかは驚かない。
それでも、この宇津井さんの男らしさは衝撃的で、
画面に映る度に「ほんとに宇津井さんか!?」とさばかは目を疑った。
さほどマッチョなわけでもないのに、マッチョに見えた。
宇津井健っていうかちょっとソフトな丹波哲郎みたいだった。それほど男らしかった。
もし宇津井特集がどこかでなされるときは、必ずこの作品を組み込んでいただきたい、そうおもった。

あとは…そうだな。ミニチュア感は…確かにミニチュアっぽかったけど、そんなことどうでもいいくらい
他がシュールだとおもったよさばかは。

でも藤村志保さんと允ちゃんのペアってのは新鮮だった。

Собака
by pastsarami | 2013-09-25 12:22 | театр
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